私が肛門の勉強を様々な専門病院で研修や診察・手術をしてきた中で思うことは、可能なら肛門専門病院や大腸肛門病専門医の元で診察・手術したほうがいいと思っております。何故ならおしりの病気は専門性が高く、高度な専門知識と豊富な経験が必要で、安心・安全に手術をうけることができるからです。
患者様の肛門科に対するイメージとして『恥ずかしい』『怖い』『痛いことされる』『すぐに切られる』などがあり、どうしても悪い印象が先行し、受診を敬遠されがちです。そのため受診をためらい、我慢できないほど悪化してようやく受診され、診察すると『どうしてもっと早く来なかったの?』と言いたくなるような患者様もおられます。またその様な患者様に限って、治療や手術して良くなると『もっと早く受診して手術すればよかった』と言う人がほとんどです。女性においては『男性医師に診てもらうのは恥ずかしい』『男性と同じ待合室は恥ずかしい』などの理由から、レディースクリニックや女性医師を探して遠方へわざわざ受診される方も多いと聞きます(実際肛門専門の女性医師は少ないです)。我々は一つ目のポリシーとして、患者様の肛門科に対するマイナスなイメージをできるだけ払拭し、安心して受診できるような環境や雰囲気づくりを作っていきたいと思っております。
また治療に関しては、おしりの病気のほとんどが「薬による治療」で治る場合が多いですが、慢性なものや炎症性のものなどは「手術」が必要な場合があります。肛門の手術に対しては『痛い』『辛い』『入院が必要』『入院期間が長い』『術後の排便が怖い』などネガティブなイメージが多いですが、近年手術法や薬の進化により、以前に比べればずいぶん楽に行えるようになり、上記なイメージは少なくなったと思います。実際、以前は入院手術が普通であった疾患でも今日では日帰り手術も可能となるものもあります。例えばいぼ痔(内痔核)に対する切らない手術で脱出性内痔核に注射するALTA療法(ジオン注)という痛みが少なく、早期に日常・社会生活に復帰できる手術方法が出てからは日帰り手術で行う施設が増えてきております。また鎮痛剤なども様々なものが増え、疼痛に対する不安も解消されてきております。しかし、患者様にとって切らない手術(ALTA注射療法)ですべてのいぼ痔の手術ができれば、素晴らしいことですが、実際は切らないと治らない痔核がほとんどです。私の肛門手術に対する2つ目のポリシーとして肛門機能をできる限り温存し、安全な手術を心がけております。もちろんその疾患自体の根治性が無ければいけませんので、こちらも日々治療法を追求していきたいと思っております。
おしり(肛門)は口から入った食べ物が最後に消化されて出てくるところであり、おしりやおなかの調子が悪いと身体だけでなく、精神的にも異常をきたすことがあります。一生付き合っていく器官で、ほぼ毎日使用するところであり、毎日様々な食事や環境の変化があるため、良い状態(快適な排便)を安定して継続していくのは中々難しいものです。我々は患者様が以前の快適で安定したおしり生活(快便)に戻り、さらにその快便を継続していくために、患者様の年齢・性別・生活環境などを考慮し、様々な治療法を組み合わせて治療させていただきます。
肛門領域はまだまだわかっていないところもあり、これからも患者に良い手術方法は出てくると思います。患者様がより良い生活を得られるように日々勉強や研究をし、邁進して参ります。