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大阪市住吉区あびこ駅前の肛門外科

おしり(肛門)の手術方法

Medical

ここでは主に3大痔疾患(痔核、痔瘻、裂肛)の手術方法を説明します。

 

痔核(いぼ痔)の手術

患者様により体形や年齢・性別が違うように、痔核も形・大きさ・場所、症状などが全く違うため、それに合わせた治療や手術が必要になってきます。当院の手術方法は主に下記の方法を単独または組み合わせて、患者様に最適な治療を行います。

麻酔法は別項で説明しております。

ALTA注射療法

はじめに

近年、脱出性内痔核に対する治療として切らなくて済む注射療法で硫酸アルミニウムカリウム水和物・タンニン酸(ALTA)(商品名ジオン®)を使用した四段階注射療法(ALTA注射療法)というのが出てから、以前の硬化療法(PAO)に比べ脱出性痔核に効果があり、ALTA注射療法講習を受けた医師なら誰でも施行できることから、肛門外科専門医以外でもいろいろな病院・クリニックで行われるようになりました。

手術方法

ジオン注という薬液を内痔核内の静脈瘤に均等に行きわたるように4段階に注射していく方法で、主成分である硫酸アルミニウムカリウムが粘膜下に炎症を起こさせ、組織に線維化を促し、静脈瘤を器質化させ、肛門括約筋に固着させることで、脱出や出血を改善します。手術の体位はジャックナイフまたはシムス体位で行います。麻酔はほとんどの場合行わなくてもできますが、肛門括約筋のしまりが強く、また専用の肛門鏡(Z式肛門鏡)を挿入するときに痛みが非常に強い場合はおしり周りに局所麻酔をする場合があります。痔核の根部(口側)から順に注射をしていき、痔核の大きさにより投与量を調節します。1か所注射終わるたびに、注射した痔核を薬液が痔核全体になじむように指でマッサージします。続けて、他の部位も行い、大体1~4カ所ほど行います。最後に止血と脱肛しないか確認し、手術終了となります(手術時間は約5分程度)。

手術適応

この適応はあくまでも脱出性内痔核(Goligher分類ではGrade Ⅱ・Ⅲ)ですが、適応を少し広げて外痔核伴う脱肛や粘膜型の痔核(不顕性直腸脱を伴う)にも施行される場合もあります。外痔核を伴う場合、内痔核にALTAを行い、外痔核は結紮切除を行う併用療法を行う場合もあります(ALTA + EA法)。

粘膜型痔核(直腸の粘膜の弛みの強い痔核)の場合は根治性の高い痔核結紮切除(LE)をお勧めします。

禁忌(注射できない方)

妊婦・妊娠の可能性のある婦人、授乳中の婦人。透析療法を受けている方(アルミニウムの排泄の遅延の可能性)。嵌頓痔核(悪化の恐れ)。小児(安全性が確立されていない)。リドカインに対する過敏症の既往ある方。

副作用・有害事象

発熱が数%に認めますが、一過性の場合がほとんどです。また効果が強い分、投薬量や投与部位を間違うと大変な有害事象を起こすことがあります。投与量が多すぎたり、深く針が入り注入すると炎症作用のため、潰瘍・穿孔・膿瘍・直腸肛門狭窄を発症したり、男性では近くに前立腺があるため、排尿障害を起こしたり、女性では前方に膣があるため、潰瘍から直腸膣瘻を起こしたケースも稀にあるため注意が必要です。

メリット

他の切る手術と比較して、痛みや出血が少ない。社会復帰が早い(当日より可能)。抗凝固薬(抗血栓薬)を内服中でも治療できます。

デメリット

他の切る手術に比べ、再発率が高い。外痔核主体の痔核には向かないです。

術後経過

効果はすぐに現われ、脱肛は無くなります(ジオン注射の適応であれば)。定期的に通院し再発や副作用・有害事象がないかの確認をします。発熱が1週間以内に発生する場合がありますが、1,2日で治まる場合がほとんどです。注射した痔核は硬くなり、少し違和感が残りますが、1,2か月後には柔らかくなってきます(個人差はあります)。

最後に

痛みや出血も少なく社会復帰も容易なALTA注射療法を脱肛するすべての痔核にできれば良いのですが、残念ながらそうはいきません。実際切る手術に比べ再発も多いです。この方法が適切であるかどうかは診察して見ないとわかりません。

痔核結紮切除術

はじめに

結紮切除術(ligation and excision : LE)といって、切除する痔核根治手術として、さらに根治性の高い方法として最も一般的に行われている方法です。

手術適応

Goligher分類ではGrade Ⅱ・Ⅲ・Ⅳが適応となります。保存療法で効果が無く、改善しても繰り返す。ALTA注射療法の適応でないまたはALTA注射療法施行後の再発。外痔核成分が大きい。脱肛する内痔核が長期にわたる脱出の繰り返しにより炎症を起こし、硬くなり器質化している。痔核より奥の直腸粘膜のたるみが強い場合などです。

手術方法

1~3カ所の痔核組織を剥離して根部の痔動脈を含む粘膜組織を結紮し、開いた粘膜部を半閉鎖して、結紮した痔核を切除する方法が一般的です。しかし、痔核の切除幅や深さ、根部結紮方法、半閉鎖の方法などは術者や施設により少しずつ違いがあり様々な方法があります。
当院ではまず肛門全体を観察し、痔核の大きさや脱出の程度、肛門の広さなどなど様々なことを観察し、切除する方向、数、切除方法などを決めます。また肛門が狭くなりすぎないように切除幅も考慮して切除します。半閉鎖法は当院では出血リスクの少なく、つり上げ効果の高いかがり縫いまたは巾着縫合を行っております。
また痔核の数が多い・隣接しているなどの場合、分離結紮法を併用して行います(後述参照)。さらに痔核を切除する奥行きも考慮して切除しております。痔核より奥の直腸粘膜の弛みがある(粘膜型痔核、不完全直腸脱の合併)場合、切除範囲が奥のほうにまで及び出血のリスクも高まり、さらに痔核切除のみではつり上げ効果が弱いため、それに対し、刺通結紮(Gant-Miwa縫合)を直腸粘膜に対し追加する場合があります(後述参照)。

術後経過

別項目でも説明しておりますが、食事・排便は通常通りできます。約1~2か月で完全治癒する場合がほとんどです。

メリット

再発が少ない(根治性が高い)。どんな痔核にも対応できる。

デメリット

出血のリスクがある(1%弱)。術後の痛みがある。痔核切除の数が多いほど出血の頻度・疼痛は強くなる傾向にあります。

分離結紮法

はじめに

分離結紮法は古典的痔核結紮術や振分け結紮法とも呼ばれ、痔核の根部を持続的に絹糸で緊縛して、局所の阻血性壊死により痔核を脱落させる方法です。

手術適応

内痔核、外痔核、内外痔核、肛門ポリープ
内痔核だけでなく、外痔核も含めた痔核全体を結紮できますが、外痔核を結紮すると術後疼痛が強くなるため、当院ではできるだけ内痔核部分に行います。また痔核結紮切除術と併用したり、直腸脱や直腸粘膜脱の手術と併用したりします(後述参照)。

手術方法

痔核を専用の鉗子でつかみ、絹糸をつけた針を、切除したい痔核の外側もしくは内側(口側)より刺入し、切除したい部位まで出します。針の近くで糸を切り、2本に分かれた糸を左右に分けて、それぞれ切除したい範囲で痔核を結紮します。場合によっては、結紮切除した痔核の外側に減張切開を加えて、肛門内に引き込みやすくする場合があります。

術後経過

結紮した痔核は壊死し、約1~2週間で脱落いたします。脱落までの間、痔核はあるので少し違和感やツッパリ感、はさまった感じはあります。また壊死してくると特有の匂いがする場合があります。脱落した痔核は通常の排便と一緒に出て、いつ取れたかわからない場合もあります。脱落した時に一過性に少量の出血が認める場合がありますが問題ありません。出血が止まらない、量が多い場合は連絡してください。

痔瘻(あな痔)の手術

痔瘻(あな痔)の深さ、場所、数に応じて手術方法を決定します。痔瘻の手術方法は大きく分けて3つあります。

切開開放術(Lay open法)

はじめに

従来より全国的にも比較的よく行われる方法で、瘻管から外側の括約筋と肛門上皮・皮膚を切開して開放します。他の方法と比べ再発率は少ない反面、深い痔瘻や前方の痔瘻で行うと便漏れの懸念があります。

手術方法

瘻管から外側の括約筋・肛門上皮を切開し、開放します。ただ開放するだけではなく、瘻管の不良肉芽などを除去し、瘻管の底から徐々に治癒・閉鎖してくるようにすり鉢状に切開創を整えます。切開部に便や汚物が残りにくくするように切開した外側を少し開放して、ドレナージ創を作成します。

手術適応

比較的瘻管が表面に近い痔瘻(低位筋間痔瘻)や裂肛から生じた浅い皮下痔瘻などが良い適応です。また前方方向で切開開放を行うと、便漏れの懸念があり、ほとんど施行することはありません。後方は切開開放してもそれほど便漏れすることはありません。

術後

傷が完全に治癒するまでは大きさにもよりますが、2~4か月くらいです。

シートン法(Seton法)

はじめに

瘻管にゴムを通して徐々瘻管を浄化しながら瘻管を外側に出していく方法です。括約筋温存法より再発少ないです。痔瘻の瘻管を浄化し、括約筋を通過してゆっくり外側に抜けていきます。そのため肛門括約筋の機能も保たれます。イメージは分厚い氷(括約筋)におもりをつけた針金(シートン)をつるして、ゆっくりと針金が抜け落ちていく感じです、はりがね(シートン)が通ったところは実際は切れてはいますが、ゆっくり治しながら切れていくため、氷(括約筋)の損傷はほとんどありません。

手術方法

①2次口と呼ばれる痔瘻の出口から括約筋の手前までくり抜きを行います。

②そこから原発巣から1次口(肛門内の痔瘻の入り口)へ細い鉗子を通して、シートン用ゴムを留置します。

③外側のくり抜きを切除し、ドレナージ創を作成し、ゴムを閉めすぎないようにシートンゴムを糸で結紮し、手術終了します。

 

手術適応

どの痔瘻でもほぼ可能です。日帰り手術希望の場合は局所麻酔下にできるため、シートン法をお勧めします。

メリット

括約筋温存法に比べ再発が少ない(約5%未満)。局所麻酔・日帰り手術が可能。

デメリット

数ヶ月おしりにゴムが留置するため、違和感や若干の痛みがある。

術後経過

シートンゴムが徐々に外側に抜けてくるため、約2~3週置きにシートンゴムを締めていきます。痛みが出るほどゴムを締め付けることは致しません。むしろゴムは閉めすぎなくてもゴム自体の自然の排出力でゆっくりと治しながら抜けてくるため、あまり早く抜けすぎると痔瘻の瘻管が治りきらないまま抜けてしまい、瘻管・不良肉芽が残存する可能性があります。シートンゴムが抜けるのは浅いもので2~3か月。深いもので4~8か月ほどかかりますが、個人差があり予想より時間がかかる場合もあります。また不良肉芽がゴムのある出口周囲にでき、出血や痛み、ドレナージ不良の原因になるため、外来でその不良肉芽を削って除去する場合もあります。

括約筋温存

はじめに

比較的近年行われるようになってきた術式です。痔瘻の瘻管を括約筋手前までくり抜き、括約筋内の原発巣をきれいにし、別経路より肛門上皮を内肛門括約筋より剥離し、1次口から原発巣に通じる瘻管を遮断し、1次口と括約筋の瘻管を縫合閉鎖する方法です。

手術方法

①2次瘻管を括約筋手前までくり抜きます。

②瘻管と原発巣を鋭匙で掻把します。

③次に肛門縁より侵入し、内肛門括約筋より上皮を剥離し、1次口近くで巣コツ内肛門括約筋を一部切開し、瘻管を離断します。

④離断したら、原発巣を再度鋭匙で掻把し、その部分を縫合閉鎖します。1次口の上皮も縫合閉鎖します。

 

手術適応

どのタイプでも基本出来ますが、原発巣の感染が強く、膿瘍がまだある場合。瘻管が太い。慢性下痢や頻便の方。クローン病の方などは再発リスクが高いため、シートン法などをお勧めします。また局所麻酔下では手術が困難(肛門括約筋の弛緩が十分得られないため)であり、腰椎麻酔下での手術が必要で入院での手術が必要となります。

メリット

治癒期間が短い。

デメリット

シートン法などに比べ再発率が高い(約10%未満)。

術後経過

痛みは傷の大きさに比例しますが、痔核手術ほど痛みはありません。鎮痛剤で治まる場合がほとんどです。定期的な外来で創部や再発のチェックをします。もし再発した場合は、シートン法に切り替える場合があります。

裂肛(切れ痔)の手術

はじめに

ほとんどの裂肛は保存療法(軟膏、内服、排便・生活指導など)で改善しますが、保存治癒で改善しない場合、治っても繰り返す場合、肛門狭窄がある場合などは手術をする場合があります。通常の肛門は指が3本くらい入りますが、肛門狭窄の場合は指が1本も入らない場合もあります。
裂肛の手術方法は以下のようなものがあります。

肛門拡張手術

手術方法

切開は行わず、肛門に指を挿入して広げる方法です。

手術適応

軽度な機能的な肛門狭窄に行われます。

裂肛手術

手術方法

慢性裂肛や見張りいぼ・肛門ポリープを切除します。切除した部分は創縁を整え、切除部分に駐留しないようにドレナージ形成をします。

手術適応

肛門狭窄を伴わない慢性裂肛が適応です。

術後経過

創治癒まで定期通院していただきます。約1,2か月で治癒の見込みです。また再度裂肛にならないようにするケアも大事です。

肛門狭窄形成術(SSG法 : Sliding Skin Graft)

手術方法

慢性裂肛や見張りいぼ・肛門ポリープを切除します。肛門開創器を挿入し、裂肛潰瘍部の瘢痕部を少しずつ切開を加えながら広げます。広がったら、切除した欠損部を閉鎖するように肛門縁の皮膚と内側粘膜を5針ほど縫合閉鎖します。このままでは縫合したところに緊張がかかり、糸が外れますので縫合した外側に減張切開をし、皮膚をスライドさせます。

手術適応

肛門狭窄のある慢性裂肛。他の痔核切除後などの術後瘢痕による肛門狭窄にも行う場合あります。

術後経過

創治癒まで定期通院していただきます。約1,2か月で治癒の見込みです。ただ、裂肛になる方は、便通異常(便秘よりも下痢の方が多い)やおしりの閉まる筋肉を無意識に閉めているため、また裂肛になる可能性あり、注意が必要です。

側方内括約筋切開術(LSIS法)

手術方法

側方の肛門縁よりメスを挿入して狭くなった内括約筋を浅く切開します。

手術適応

急性裂肛で内肛門括約筋の緊張が強く、器質的に狭窄していない機能的な肛門狭窄に行います。

経過

出血に注意し、経過を見ます。一度切った内肛門括約筋は元に戻せないため、高齢になり、便漏れが懸念される場合もあり、当院では積極的には行っておりません。代わりに薬や肛門マッサージによる内肛門括約筋の緊張を和らげる指導をしております。