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大阪市住吉区あびこ駅前の肛門外科

女性の肛門疾患

Medical

女性の場合、解剖学的違いや出産があるため、男性より起こりやすい症状・疾患があります。

 

  1. 直腸瘤
  2. 肛門括約筋不全
  3. 直腸膣瘻
  4. 骨盤臓器脱(子宮脱、膀胱脱、直腸脱、直腸瘤
  5. 直腸脱
  6. 直腸粘膜脱

男性との違いは何なのか説明します。

 

解剖学的違い

直腸肛門前方に膣がある:男性の場合、前方に前立腺があり、さらにその前方は恥骨のため、前方への圧がかかっても瘤になることは少ないです。しかし女性の場合、膣壁と直腸壁の間は薄い壁で肛門に近い部位は「会陰体」という組織が骨盤全体の中心となり、骨盤内臓器を支えていると考えられます。その会陰が脆弱になると直腸が前方(膣方向)に突出し、さらに子宮や膀胱などが脱出しやすくなります。

 

骨盤腔が広い:女性は妊娠・出産するため、男性より骨盤腔が広く、その分骨盤底筋が緩むと骨盤内蔵が脱出しやすくなります。

 

生殖器が骨盤内にある:男性は生殖器(陰茎・睾丸)が外にありますが、女性は子宮・卵巣が骨盤内にあり、年齢とともにそれらを支える靭帯のゆるみや子宮・卵巣疾患により摘出手術を受け、さらに骨盤底筋の弛みが重なり、直腸脱などの骨盤臓器脱を合併します。

 

出産(経腟分娩)

分娩の時大きな児頭が膣より出てくるわけですが、この時かなり膣壁は伸びます。
しかし、膣壁は平滑筋で主に構成されているため、元の状態に戻ります。
しかし、急速な分娩や鉗子・吸引分娩の場合、膣壁や会陰に多大な力が急速に加わることで、膣壁の裂傷、さらには肛門括約筋・肛門管・直腸壁の損傷・裂傷をきたします。そうならないために会陰切開をあえて行ったりもします。

【会陰切開】

分娩時に胎児が出やすくするためや裂傷予防に、会陰部を切開する処置。通常正中切開または正中側切開される。分娩の約7~8割が施行されている。

 

【会陰裂傷 1度】

 

【会陰裂傷 2度】

 

【会陰裂傷 3度】

 

【会陰裂傷 4度】

 

分娩時に会陰部が裂けてしまうこと。ほとんどが正中に起こる。

 

原因

  • 分娩進行が急速(墜落分娩、吸引・鉗子などの急速遂娩、子宮収縮剤投与など)
  • 過度の伸展(巨大児、反屈位、回旋異常、胎位異常など)
  • 会陰部の伸展力不良(高齢初産婦、若年初産婦、軟産道強靭、手術瘢痕など)
  • 会陰保護の不足など

 

直腸瘤(Rectocele)

 

はじめに

直腸瘤は直腸膣中隔の脆弱性により、直腸下部が膣側へ脱出するものであり、女性特有の病態といってもよい.かつては“直腸膣壁弛緩症”と言われ、その後“直腸瘤”と訳されるようになりました。

 

原因

妊娠・出産,他に慢性便秘による急性・慢性的に直腸膣中隔や会陰体部への圧により脆弱になり、また先天的に形成不全などがあり発症するといわれております。

 

症状

膣側への直腸の壁の突出、便秘、違和感、残便感。また残便感から慢性的な息みにより直腸重積や直腸脱,直腸粘膜脱なども合併すると脱肛症状もある。

 

治療

まずは便通障害を改善するような薬物療法や排便の指導などを行います。しかし器質的異常のため完治は困難な場合が多いです。手術適応は排便困難や残便感、便漏れなどの症状に加え、排便造影(defecography)上での直腸瘤の大きなものです。直腸瘤に対する手術方法は様々なものがありますが、特に一定の方法はありません。

当院では分娩後の重度会陰裂傷による肛門括約筋不全や直腸膣瘻の手術と同じく、骨盤底を支える靭帯・筋肉の中心である「会陰体」を縫合する肛門括約筋形成術を行っております。

 

 

直腸瘤の手術(会陰体縫合+直腸粘膜脱手術)

手術方法

①直腸瘤のところには本来あるはずの括約筋の一部である会陰体が離開または脆弱化して左右に分かれております。

②会陰部皮膚を横切開し、直腸瘤の頭側まで直腸壁と膣壁の間を剥離し、左右に離開した会陰体を縫合していきます。

③会陰体を何層にも縫合し、厚みをもたせ、皮膚を閉鎖します。

④余剰の直腸粘膜は直腸脱手術(Gant-Miwa)の要領粘膜を刺通結紮します。
(これは別の日にする場合があります)

 

 

肛門括約筋不全

はじめに

肛門括約筋不全とは肛門(おしりの穴)を締めたり緩めたりする内外肛門括約筋などが正常に機能しないために、予期せぬ便漏れを起こしてしまう疾患です。

 

原因

大きく3つの原因が考えられます。

  1. 外傷性:出産(会陰切開、会陰裂傷など)、手術(痔瘻など)
  2. 機能性:加齢、神経疾患(坐骨神経障害、糖尿病など)、甲状腺疾患、薬剤性など
  3. 先天性:鎖肛、総排泄腔(膣と肛門の出口が一緒になっている)

 

症状

便漏れ、下着がいつのまにか汚れている。便が我慢できない。下痢の時漏れてしまう。

 

治療

まずは便通障害を改善するような薬物療法やバイオフィードバック療法を行います。また原因となるものがあれば、その治療を優先します。保存加療で改善しない場合は手術治療の適応となります。外傷性損傷、特に分娩外傷による肛門括約筋不全の場合は様々な手術方法がありますが、当院で行っている会陰体縫合による肛門括約筋形成術が良い適応で、お勧めです。

また機能性括約筋不全、特に神経伝達不良によるものであれば、仙骨神経刺激療法(SNM)の適応です。小型の刺激装置(ペースメーカーのようなもの)を植込み、直腸や肛門といった排便に関係する神経である仙骨神経に対し電気刺激を与えることで便失禁の症状の改善を図る治療方法です。当院ではできませんので、適応のある方は手術できる施設をご紹介いたします。

 

その他

直腸脱で長年脱出している高齢者の場合、多くの方は肛門括約筋が緩んでしまい、直腸脱の手術(Gant-Miwaや直腸固定術)をしても、すぐに肛門括約筋の締まりが改善せず、便漏れが続く場合があります。そこで同時にティールシュ法(Thiersch法)といって、特殊な繊維やナイロン糸、テフロン紐などを肛門周囲にリング状に留置して、再発を減らす目的で行われることがあります。しかしこの方法は、異物を肛門周りに入れるため、感染を引き起こしたり、異物が露出してくることがあります。またこれをしても括約筋が実際に締まるわけでなく、むしろ便が出にくくなり、再脱出した時に直腸が嵌頓し、血流障害を起こす可能性があります。このような理由から私どもはあまりThiersh法をお勧めしておりません。

 

 

直腸膣瘻

はじめに

直腸膣瘻とは直腸内と膣腔が瘻孔でつながった状態で、女性のみに起こる疾患です。

 

原因

分娩外傷(3,4度会陰裂傷)、会陰切開の大きなもの、クローン病、術後(直腸がん、膣がんなど)、放射線治療、会陰部外傷、膣や直腸内に異物の挿入による外傷、感染症、先天性などがあります。直腸膣瘻自体の頻度はかなり少ないですが、直腸膣瘻のなかでは分娩外傷が多いです。

 

症状

膣への便・ガス漏れ、尿漏れ、便漏れ、性交障害。またこれらによる悩みや再発を繰り返すため、うつ病になる人もいる。

 

治療

原因によって治療法が異なります。ここでは分娩外傷後の直腸膣瘻の治療について説明します。通常瘻孔を閉鎖する手術を行いますが、単純に瘻孔を閉鎖しただけでは必ずと言っていいほど再発します。原因はこの部位の肛門は排便する時にかなり圧がかかることや便が通過するため、感染や離開のリスクが高いからです。直腸膣瘻の手術も直腸瘤と同様に様々な手術方法が報告されておりますが、再発も多いです。また再発予防のため創部保護目的に便が通らないように中心静脈栄養(IVH)による長期絶食や一時的人工肛門造設までされる場合がありますが、いざ食事再開したり、人工肛門を閉鎖しても再発する場合が多いようです。

私が行っている方法は、会陰体縫合による肛門括約筋形成術を利用した方法で、本来あった強靭な組織を修復します。この方法では翌日から食事もでき、再発も少なく良好な経過を得ております。次の項で手術の詳細を説明します。

 

 

直腸膣瘻の手術(会陰体縫合)

 

 

骨盤臓器脱

はじめに

骨盤臓器脱とは骨盤にある臓器である子宮、膀胱、直腸などがだんだんと下がってきて、膣から体外に出てしまう病気をいいます。脱出する臓器により、子宮脱、膀胱瘤、直腸瘤、小腸瘤、膣脱などに分かれ、これらが単独または同時に出現してきます。このような状態を総称して性器脱と呼ぶこともあります。

 

原因

骨盤の底には子宮、膀胱、直腸などの臓器を支えている筋肉や靱帯があり(その中心が「会陰体」となります)、腹圧により臓器が骨盤外に出ないように支えています。お産を繰り返したり年齢を重ねていくとこの支えが緩み、子宮や膀胱、直腸が骨盤の中から膣に下がってきます。進行すると膣壁が反転して膀胱、子宮、直腸が体外に完全に脱出してきます。リスクファクターとして慢性的な咳や便秘を繰り返す方、仕事などでいつも重い荷物を持っている方、肥満体型の方など、腹圧がかかりやすいと骨盤臓器脱になりやすいといわれています。

 

症状

下腹部や膣になにかが降りてきたような違和感や、膣から丸いものがふれるというのが初期症状です。これらの症状は午前中よりも活動した午後に多くみられることが多いです。進行すると、常に股の間にものがはさまった感じとなり、尿や便がすっきりと出なくなります。高度になると膣壁が下着にすれて出血するなど歩行も困難となり、日常生活が大きく制限されてきます。

 

治療

  • 治療には大きく分けて 保存的治療、2. 手術療法の2つがあります。どの治療を選択するかは、脱出する臓器の種類や程度、症状の重症度、年齢や身体状況(合併症の有無)、挙児希望の有無、性行為の有無、生活スタイルなどを総合的に考えて決めていきます。通常保存的に改善するのは困難な場合が多いです。

1.保存療法

  • (1)骨盤底筋体操

軽症には、骨盤底筋を鍛える体操が有効と言われています。脱出の進行を予防し、脱出による痛みの緩和や、尿失禁の改善が期待できます。骨盤底筋体操は最低でも3ヶ月は継続する必要があるため、即効性はありませんが、合併症や副作用がないため安全です。最初は正しい骨盤底筋の収縮をさせることができない患者さんが大変多いです。

  • (2)膣内装具(ペッサリーなど)

手術はまだ怖い、合併症などの問題で手術ができない場合などには、ペッサリーという7cmくらいのリングを膣内にいれて臓器が下がってこないようにする方法があります。対症療法になるため、骨盤臓器脱を根本的に治す治療ではありません。おりもの・出血・違和感・不快感がでたり膣粘膜の炎症が起きやすくなるため、定期的な通院および交換が必要になります。

2.手術療法

  • (1)肛門括約筋形成術(会陰体縫合)
    初期の直腸瘤に適応があります。骨盤を支える靭帯・筋肉の中心にある「会陰体」を再建する方法です。子宮や膀胱が大きく脱出している症例では適応になりません。直腸瘤参照
  • (2)経腟メッシュ手術(TVM手術)
    メッシュを挿入し、臓器をハンモック状に支える手術がTVM手術です。複数の臓器脱出、子宮脱や膀胱脱の大きなものに適応があります。当院ではできませんので、適応のある方は手術できる施設をご紹介いたします。
  • (3)腹腔鏡を用いた腟仙骨固定術 (LSC手術)
    仙骨腟固定術といい、子宮または子宮摘出後の腟断端を吊り上げて仙骨前面の靱帯に固定する手術です。当院ではできませんので、適応のある方は手術できる施設をご紹介いたします。

 

 

直腸脱

はじめに

脱肛の一種で、直腸脱は完全直腸脱と不完全直腸脱に分けられ、単に直腸脱というときは完全直腸脱を指すのが一般です。完全直腸脱とは直腸の全層が裏返しになり肛門の外に脱出する状態で、不完全直腸脱は肛門の外にはあきらかに脱出していませんが、直腸内で弛みや重積を認めます(直腸重積、不顕性直腸粘膜脱ともいいます)。不完全直腸脱の場合、全周性の痔核(いぼ痔)と診断される場合もあります。

原因
成因あるいは誘因については諸説が報告されていますが、全てを説明しうる説はありません。先天的因子に後天的誘因(便秘など)が加わり発症するものと考えられています。直腸脱の発生頻度は一般に高齢者に多く、特に女性に多いのが特徴です。しかし若年者の男子にも発生しないわけではありませんが、特殊な場合が多いようです。

症状
直腸の脱出、便漏れ、排便困難が主となりますが、脱出による下腹部の違和感や排尿困難なども見られます。初期は排便時に強くいきんだ時に直腸が肛門から脱出し(肛門の脱出では無いが本人は肛門の脱出と思っていることが多い)、いきむのをやめると自然に戻ります。さらに病状が進むと立ち上がるだけでも脱出し、手を使わないと自然に戻らなくなります。また脱出することで便が出始めても続かず残便感が続いたり、身体活動が制限されたり気分不快をきたします。脱出は大きい場合は10cm以上にもなり、粘膜面は同心円状の皴を呈します。脱出してむくみが強くなると手で戻すことが困難になり、専門医でも腰椎麻酔を必要とすることもあります。

治療
手術が適応となりますが、その手術方法は成因や誘因と同様50種類以上にものぼり、数多く報告されている手術成績もまちまちです。術式は一般に会陰部から操作する会陰式(経肛門式も含む)と下腹部を開腹する腹式に大別されます。
*会陰式の手術

Gant-三輪法やMuRAL法、Delorme法などがあります。腰椎麻酔(場合によっては局所麻酔・無麻酔でも可)で施行できるため侵襲が低く比較的安全ですが、再発率が高いのが欠点です。
*腹式の手術
直腸をつり上げ固定する方法が一般的です。再発率が低く成績は良いのですが、全身麻酔で行うため侵襲が高くなります。最近では腹腔鏡による手術が可能となり手術侵襲は減少しました。しかし心臓に重篤な病気があり全身麻酔をかけることが危険な場合などは腹式の手術はできません。

腹式、会陰式のどちらを選択するかは、(1)症状の程度、(2)脱出の程度、(3)患者の全身状態を考慮して決定します。

おわりに

直腸脱は高齢者、特に女性に多い病気で、社会の高齢化にともない増加傾向にあります。直腸が脱出すると活動が制限され外出するのも億劫になり、脱出が頻回になると肛門のしまりが悪くなり、便漏れをきたすことも多くなります。そしてQOLが低下します。手術をすることで直腸の脱出がなくなると体の動きが楽になり、肛門のしまりが良くなるため日常生活を快適にします。直腸の脱出がなくなったことによりストレスが解消し、結果としてQOLは良くなります。
女性では肛門が出ていると思っていて、実は子宮脱(子宮が膣から脱出する病気)や膀胱脱、あるいはこれらすべてを合併していることがあります(骨盤臓器脱)。いずれにしても正確な診断と適切な治療法のためには、何らかの症状に気付いたり、症状が気になったら早めに専門医による診察と検査を受けることが重要です。

 

 

直腸粘膜脱

はじめに

病名のごとく直腸の粘膜が脱出しますが、直腸脱との違いは粘膜の筋層を含まない一部の直腸粘膜が脱出します。

原因
諸説ありますが、便通異常(便秘)、加齢、肛門手術後(ホワイトヘッド手術など)に起こりやすく、肛門でのストッパーとなる肛門括約筋の弛みや痔核の消失などで起こります。

症状
脱肛やパンツが汚れる、しばらく歩くと脱出するなどといった症状で、よく痔核(いぼ痔)と間違えられます。また以前に痔核手術したが、再発したといって受診される場合もあります。痔核の脱肛との違いは、痔核の場合うっ血した静脈瘤が脱出しますが、直腸粘膜脱はうっ血した痔核はほとんどなく、弛んだ直腸粘膜がずり出てきます。痔核手術を行ったのに、また出てきた場合はこの直腸粘膜脱や直腸脱の可能性も考えられます。

治療
基本的には手術で治します。
直腸粘膜脱形成術を行いますが、直腸粘膜脱の原因によっては、少し手術方法が異なります。
1.手術既往がなく、痔核と直腸の弛みがある場合は痔核切除(結紮切除or 分離結紮)+Gant-三輪法。
2.肛門手術後の場合、ストッパーとなるもの(痔核及び肛門管上皮)が以前の手術で切除されているとそこから直腸粘膜が脱出してきます。そこで、直腸粘膜が出てこないようにストッパーとなる皮膚弁を肛門に入れる手術(V-Yグラフト)を行います。