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大阪市住吉区あびこ駅前の肛門外科

クローン病

Medical

クローン病

クローン病は炎症性腸疾患のひとつで、主に小腸や大腸などの消化管に炎症が起きることによりびらんや潰瘍ができる原因不明の慢性の病気です。主な症状としては、腹痛、下痢、血便、発熱、肛門付近の痛みや腫れ、体重減少などがあります。また、さまざまな合併症が発現することがあります。
クローン病は、厚生労働省から難病に指定されていますが、適切な治療をして症状を抑えることができれば、健康な人とほとんど変わらない日常生活を続けることが可能です。

 

 

炎症性腸疾患Inflammatory Bowel Disease: IBD)とは

私たちの体には免疫系という防御システムが備わっていて、ウイルスや細菌などの異物の存在を察知すると体内から追い出そうと活動します。このときに腫れや痛み、発熱などの反応が起こります。この反応のことを「炎症」と呼んでいます。
炎症は体にとって不可欠なものですが、過剰に起こると体を傷つけることになります。炎症が消化管に起こる病気を総称して「炎症性腸疾患」といいます。

炎症性腸疾患のうち、細菌や薬剤などはっきりした原因で起こるものを特異的炎症性腸疾患といいます。感染性腸炎、抗生物質等の薬剤で起こる薬剤性腸炎、虚血性腸炎、腸結核などは特異的炎症性腸疾患です。炎症を起こす原因がはっきりしている場合には、原因を取り除く治療を行います。
しかし、炎症性腸疾患のなかには、原因がわからない非特異的炎症性腸疾患もあります。クローン病はそのひとつで、1932年にニューヨークのマウントサイナイ病院のブリル・バーナード・クローン医師らによって初めて報告されました。「クローン病」とは、この医師の名前から付けられた病名です。
クローン病と似た病気で同じく非特異的炎症性腸疾患に属するものに、潰瘍性大腸炎があります。クローン病は口腔から肛門まで消化管のどの部位にも炎症が起こる可能性があるのに対して、潰瘍性大腸炎は炎症の部位が大腸に限局しているのが特徴です。

 

炎症性腸疾患の分類

 

患者数の推移と 患者の分布

クローン病は、以前はまれな疾患とされていましたが、年々増加し続け、平成26年度は日本で約4万人の患者さんが登録されています。患者数が急増した背景には、内視鏡による診断法が向上したことや、この疾患に対する認知度が向上したことも関係していると思われますが、食事を含む生活習慣の西洋化の影響も大きいと考えられています。

 

クローン病医療受給者証・登録者証交付件数の推移

発症時期は10~20代が多く、男性で20~24歳、女性で15~19歳が最も多くなっています。2:1の割合で男性の方に多くみられます。

クローン病の推定発症年齢

 

診断、病像と病変のできる部位

クローン病の診断

クローン病の診断では、内視鏡検査やX線造影検査、病理組織検査などを行います。特に内視鏡像で下記のような潰瘍がみられることが特徴です。

 

クローン病の病像
クローン病では、縦方向に走る長い潰瘍(縦走潰瘍)、潰瘍によって囲まれた粘膜が盛り上がり、丸い石を敷いたようにみえる状態(敷石像)、腸の粘膜に、口内炎のような浅い潰瘍(アフタ)、形が整っていない潰瘍(不整形潰瘍)が現れます。

 

病変部の写真を見る

病変のできる部位

クローン病には、病変のできる部位によって異なる病型があります。主に小腸にできる小腸型、小腸と大腸にできる小腸・大腸型、主に大腸にできる大腸型の3つに分類されており、それぞれ症状と治療法が異なります。最もよく病変ができる部位は、回腸(小腸の最後の部分)と大腸ですが、腸以外でも、口から肛門に至る消化管のどの部分にも起こる可能性があります。炎症・潰瘍が飛び飛びにできることが特徴です。

 

クローン病の病変部位による分類

 

 

主な症状と合併症、経過と予後

主な症状

クローン病の症状は患者さんによってさまざまで、病気の状態によっても変わります。初期症状で最も多いのは下痢と腹痛で、半数以上の患者さんにみられます。さらに、血便、体重減少、発熱、肛門の異常(切れ痔や肛門の潰瘍、肛門の周囲に膿がたまるなど)が現れることもあります。

 

合併症

クローン病の炎症は浅い粘膜から始まり、深い粘膜へと進行します。腸管壁の深くまで炎症が進行すると、腸にさまざまな合併症(腸管合併症)が起こることがあります。そのほか、腸以外の全身に合併症(腸管外合併症)が起こることもあります。

腸管合併症としては、狭窄(炎症を繰り返すことで腸管の内腔が狭くなる)、穿孔(深い潰瘍ができて腸に穴が開く)、瘻孔(腸どうし、あるいは腸と他の臓器や皮膚がつながる)、膿腫(膿がたまる)などのほか、まれに大量の出血、大腸・肛門癌がみられます。また肛門病変が特徴的で、痔瘻や肛門周囲膿瘍によりクローン病が見つかる場合も多いです。

 

クローン病の腸管合併症

腸管外の合併症としては、関節、皮膚や眼の病変などがあります。関節の病変は30%以上の患者さんに、皮膚の病変は2%程度の患者さんに、眼の病変は1~2%の患者さんにみられます。そのほかにも、アフタ性口内炎、肝胆道系障害、結節性紅斑などがみられることがあります。

 

クローン病の腸管外合併症

 

経過と予後

クローン病は、寛解(症状が落ち着いている状態)と再燃(症状が悪化している状態)を繰り返しながら慢性の経過をたどりますが、命に大きな影響を及ぼす疾患ではないと考えられています。

 

クローン病の治療

クローン病は原因が不明であるため、腸管の炎症を抑えて症状を鎮め寛解に導くこと、そして炎症のない状態を維持することが治療の主な目標になります。
内科的治療(薬物療法と栄養療法)が主体となりますが、内科的治療が有効でない場合や腸閉塞、穿孔などの合併症では外科治療が行われることもあります。

 

 

―クローン病の重症度と治療法―

 

薬物療法

薬物療法としては、主に軽症の場合は一部のステロイドや炎症抑制薬が用いられ、炎症が強い場合には、炎症抑制作用が強いステロイドが用いられます。免疫調節薬(免疫を抑制するプリン拮抗薬など)、生物学的製剤である抗体製剤などが用いられることもあります。

  • 炎症抑制薬
    腸の炎症を抑える働きがあります。
  • ステロイド
    一部のステロイドは強力な炎症抑制作用を示す薬剤です。
  • 免疫調節薬
    クローン病には過剰な免疫反応が関係していると考えられています。この薬は免疫反応を抑制するものです。薬剤の濃度が安定するまで数ヵ月かかる場合がありますが、活動期の症状を寛解に導く効果と寛解を維持する効果、ステロイドの使用量を減らす効果があります。
  • 抗体製剤
    クローン病で過剰に増加する体内物質は、腸の炎症を引き起こす原因の1つと考えられています。これらの働きを抑え、炎症を軽減させる薬です。

 

栄養療法

食事からの刺激を減らして腸の炎症を鎮めつつ、栄養状態を改善していくために、栄養剤を投与する治療方法です。経腸栄養療法と完全静脈栄養療法があります。

  • 経腸栄養療法
    液体の栄養剤を口から服用するか、鼻からチューブを入れて投与します。消化の過程を必要としない消化態栄養剤・成分栄養剤と、消化の過程を必要とする半消化態栄養剤があります。
  • 完全静脈栄養療法
    重度の狭窄がある場合、広範囲な小腸病変が存在する場合、経腸栄養療法を行えない場合などに用いられます。太い静脈にカテーテルを留置して高濃度の栄養輸液を投与します。
その他の治療
  • 外科的治療
    内科的治療では十分な効果が得られず、社会生活が困難なときには手術が必要となります。日本では、発症後5年で約30%、10年で約70%の患者さんが何らかの手術を受けています。クローン病は病変部を取り除いても再発しやすいため、できるだけ腸を残すような術式がとられます。
  • 血球成分吸着除去療法
    血液を腕の静脈から体外に取り出し、特殊な筒(カラム)に血液を通過させることにより炎症を起こしている血液成分(主に血球成分)を吸着させて取り除き、また血液を戻す治療法が行われることもあります。

 

―血球成分吸着除去療法―

  • 内視鏡的バルーン拡張術

狭窄を起こした腸管まで内視鏡が到達する場合には、内視鏡を用いてバルーン(風船)で狭窄を広げることもあります。

―内視鏡的バルーン拡張術―