裂肛|むらやま大腸肛門クリニックおしり専門サイト|あびこ駅前の肛門外科

〒558-0013
大阪市住吉区我孫子東2丁目7番38号
クリニックステーションあびこ 4F
アイコン06-6115-7064
WEB予約 QA 電卓
ヘッダー画像

裂肛

裂肛|むらやま大腸肛門クリニックおしり専門サイト|あびこ駅前の肛門外科

裂肛の症状

肛門の出口周辺にできる、びらん・裂け目・潰瘍などを総称し、一般的に「切れ痔」と呼ばれます。
20〜40歳代の女性に多く、特に便秘や下痢がきっかけとなりやすい痔疾患です。

主な症状

排便時の強い痛み

肛門が“裂けるような”鋭い痛み。軽度〜排便後も数時間続く重い痛みまで個人差があります。

鮮血の出血

排便時や排便後に鮮やかな赤色の血がトイレットペーパーや便器に付くこともあります。

違和感・痒み・灼熱感

傷跡の修復過程や慢性化による皮膚の変化で感じることがあります。

排便困難・便が細くなる

痛みや肛門の狭窄により排便しにくくなることがあります。

慢性化による皮膚変化

急性裂肛が繰り返されると、以下のような状態に進行することがあります。
・深い潰瘍
・「見張りいぼ」などの皮膚の突起
・内側に肛門ポリープの形成
・肛門狭窄によるさらに強い痛み

悪循環のメカニズム

痛みがあると排便を我慢しがちになり、便秘が進行 → 硬い便が増え → 肛門の傷が治らない、という悪循環に陥りやすくなります。

まとめ

・即時の受診目安:排便時の激痛や鮮血が続く場合

・初期対策:生活習慣(食事・水分・排便習慣)の見直し、外用薬・坐浴・便通コントロール

・慢性化対策:ポリープや狭窄などの合併症が見られる場合は、当院に相談をください。

裂肛の種類

裂肛(肛門の裂け目)には、状態や原因に応じて主に以下の4つのタイプがあります。

急性裂肛

急性裂肛

・硬い便などによって肛門上皮が深く裂ける、浅い機械的損傷。
・発症から6〜12週間以内のものが多く、適切な保存療法により自然治癒が期待されます
・終了後には強い痛みと少量出血が典型的な症状です

慢性裂肛

慢性裂肛

・急性裂肛が治らずに慢性化し、潰瘍性に進展しています
・潰瘍底に内括約筋線維が露出。肛門ポリープ(肥大乳頭)や見張りイボ(sentinel tag)が形成される「裂肛の三徴」を伴うことが特徴です
・痛みは排便中だけでなく排便後や安静時にも続く傾向があります

準備中

脱出性裂肛(随伴性裂肛)

・痔核や肛門ポリープの脱出・還納時に肛門上皮が繰り返し牽引されて裂けるものです
・脱出時に痛みと出血があり、手術の対象となる場合もあります

準備中

症候性裂肛(続発性裂肛)

・クローン病などの全身性疾患の一症状として現れる裂肛です
・この場合は保存的治療は難しく、基礎疾患そのものの治療が重要です

裂肛の治療法・手術法

保存的治療法(切らない治療)

a. 便通の調節

・食事(水分・食物繊維)を中心に、便秘・下痢・過敏性腸症候群を予防。
・食事だけで改善しない場合は、便秘薬や膨張性下剤などを使用。
・便通調整は治療効果の基本です。

b. 肛門の血流改善

・坐浴や入浴で温め、血流を促進し傷の治癒や痛み軽減を図る。
・デスクワーク・冷環境・長時間座位を避け、括約筋のマッサージや弛緩薬の使用も検討します。

c. 薬物療法

・局所麻酔薬・ステロイド軟膏の痔軟膏を症状に応じて使用。
・鎮痛薬・抗炎症薬の内服も併用することもあります。

外科的治療

保存的治療で効果がない場合、再発や肛門狭窄が見られる場合などに以下の手術が検討されます。

  1. 肛門拡張術
  2. ・適応:軽度の機能的狭窄
    ・方法:指やマッサージで物理的に拡張(必要に応じ局所麻酔)
    ・経過:毎日のマッサージを患者が継続できれば通院の頻度は減少

  3. 裂肛切除術
  4. 裂肛切除術のイメージイラスト

    ・適応:慢性裂肛(狭窄なし)
    ・方法:裂肛部・ポリープ・見張りイボの切除と排膿ドレナージ形成
    ・経過:通常1〜2か月で創縫合・治癒。再発予防のケアが重要

  5. 側方内括約筋切開術(LSIS)
  6. LSIS法のイメージイラスト

    ・適応:急性裂肛で括約筋緊張が強いが器質的狭窄はない場合
    ・方法:側方から内括約筋を浅く切開し緊張を解除
    ・注意:一度切った筋は戻らず、便漏れリスクがあり、当院では慎重に適応

  7. SSG法(Sliding Skin Graft)
  8. SSG法のイメージイラスト

    ・適応:慢性裂肛で肛門狭窄・瘢痕がある場合
    ・方法:瘢痕除去後、皮膚をスライドさせて欠損部を縫合閉鎖
    ・経過:治癒に約1〜2か月。排便習慣改善の指導も重要

  9. VYグラフト(VY plasty)
  10. ・適応:広範囲な狭窄・瘢痕、または上皮欠損が大きい場合
    ・方法:V字形に皮膚を切開しスライドさせて再構築(Y字縫合)
    ・経過:創部治癒まで約2か月。排便状態の改善が期待されます

裂肛の術後経過

一般的な日帰り・入院手術の経過は術前・術後 術後経過を参照してください。
ここでは裂肛の術後経過について詳しく説明します。裂肛の多くは肛門狭窄形成術(SSG)を行うので、これの術後経過について説明します。

肛門狭窄形成術(1、2か所)
適応疾患 肛門狭窄、慢性裂肛
痛み 1週間で痛み半減
出血 2~3週間くらい
治癒までの期間 2週くらいで症状落ち着く。減張切開部(SSG)治癒まで約1~2か月かかる。
術後QOL・仕事復帰など 痛み強く、数日間動きの制限がある(個人差はある)。仕事も数日後になる場合もある。
便通 翌日から通常通りする。当初は排便時傷の痛みはあるが、肛門が広がるので術前より便は出やすくなる。
メリット 排便時痛がなくなり、便通がよくなる。
デメリット ほど痛みは強い。治癒までは少し時間かかる。便通も悪くなる。

*個人によって経過は変わります。

術後の痛み

麻酔が切れた後、当日から翌2日目くらいまでが痛みが一番強くなります。3日目以降は排便時の痛みが強いです。1週間すると痛みはほぼ半減(10段階で5くらい)します。2週間経過すると痛みはほぼなくなります(10段階で1、2くらい)。痛みは元々の肛門狭窄の程度、裂肛の数、年齢、術前からの便通異常の程度、免疫低下などにより個人差があります。術後は鎮痛剤を2、3種類投薬し、痛みに応じて増減します。痛みは経過で徐々になくなっていきますが、便通異常や術後日常生活状況(長時間の姿勢や食事内容など)で疼痛が悪化しますので注意が必要です。

術後の出血・粘液付着

術後4週間くらいまでは軽度の出血や付着物はあります。術後はおしりにガーゼや当てもの(ナプキンなど)をしていただきます。肛門付着物が付く期間は創部が治癒するまで、個人差はあります。慢性裂肛で約1~2か月です。縫合部がありますが、糸は吸収糸を使用しており約2、3週間で自然に脱落または吸収されます。また創部に不良肉芽(創部汚染で発生する柔らかい肉芽腫瘤)が発生し、そこからの血の付着があります。この場合不良肉芽が創治癒の妨げとなる場合があり、鋭匙(耳かきのようなもの)で削る場合があります。

術後の排便

術後は排便時疼痛の怖さから便を我慢しがちですが、我慢しすぎると、肛門に圧がかかり、便が硬くなりすぎて肛門(創部)に負担がかかりますので、適度な硬さで排出する必要があります。術後はバナナよりやや柔らかめが理想です。硬い方は酸化マグネシウムなどを投薬しますが、元々便秘の方は術前から内服していた便秘薬などを内服していただき、状況に応じて他の便秘薬で硬さを調節することもあります。逆に下痢の方で術後排便回数が多すぎるのも逆に良くないので、便回数を改善する薬だけでなく、下痢を起こしやすい食事(辛い物や油っぽい食事、小麦製品や乳製品など)はしばらく控えていただきます。また裂肛・肛門狭窄で手術した方は肛門が広がりやすくなり、便が出やすくなります。また便漏れは当初はつくことがありますが、経過とともに無くなります。

治癒までの期間

個人差がありますが、大まかには2週間くらいであらゆる症状は落ち着いてきますので、このころから制限していたもの(運動やアルコール摂取、自転車など)は徐々に解除できます。治癒までは順調なら約1か月で治ります(出血や粘液付着、排便時痛など)。しかし、手術創の大きな方、肛門括約筋緊張の強い方、便通悪い方、免疫力低下している方(ヘルペス発症)などは治癒遷延する場合があります。

術後の日常生活や仕事、運動、入浴など

術前・術後 術後の経過をご参照ください。

裂肛手術Q&A

手術後、傷口が落ち着くまでにはおよそ2週間かかります。それまでは無理をせず安静に過ごすことが大切です。以下に、裂肛手術に関してよくあるご質問をまとめました。
※肛門疾患全般に関するQ&Aは術前・術後Q&Aもあわせてご参照ください。

手術中の痛みはありますか?

多くの裂肛・肛門狭窄の手術では「SSG(皮膚弁移動術)」を行います。
日帰り手術では主に局所麻酔を使用しますが、最初の注射の痛みを除けば、手術中に強い痛みを感じることはほとんどありません。
ただし、痛みの感じ方には個人差があるため、必要に応じて麻酔を追加します。不安が強い方には、希望に応じて静脈麻酔を併用することも可能です。
また、腰椎麻酔(入院手術)を行う場合もあります。こちらは狭窄が強い方や緊張が強い方が対象で、術中の痛みはなく、術後もしばらくは麻酔が効いています。

入院手術は必要ですか?

当院では、SSGを含む手術の多くを日帰り手術で行っております。
静脈麻酔+局所麻酔の併用で安全に行います。入院が必要となる方は約2割程度です。
詳細は術前・術後 日帰り・入院手術の違いページをご参照ください。

術後の痛みはどれくらい続きますか?

一番痛みが強いのは手術当日から翌日にかけてです。
それ以降は日を追って楽になります。
痛みの目安としては10段階で10が一番痛いとしますと
・手術当日:10(最大)
・1週間後:5程度
・2週間後:1~2程度
ただし、個人差があります。

術後の痛みが不安です

裂肛の方はもともと排便時に痛みを感じている場合が多いため、手術後の痛みを強く訴える方は意外と少ないです。
手術によって肛門が広がり、排便がしやすくなることも関係しています。

術後の排便が心配です(便秘があります)

通常どおり排便していただいて構いません。
排便をスムーズにするため、緩下剤(酸化マグネシウムなど)を処方する場合があります。下痢になった場合は、量を調整してください。
また、過敏性腸症候群(便秘と下痢を繰り返す)の方には、専用の内服薬を併用することもあります。
※痛みを恐れて排便を我慢すると、便が固くなり出せなくなることがあります。ひどい場合は摘便や浣腸が必要になることもありますので、我慢せず出すようにしましょう。

日常生活で気をつけることは?

術後2週間ほどは、以下に注意してください:
・長時間座りっぱなしを避ける
→座ることで肛門に緊張がかかり、傷が開いてしまう恐れがあります。
・刺激の強い食事や激しい運動を控える
→創部の回復を優先してください。

術後はどのくらいの頻度で通院が必要ですか?

術後は次のスケジュールで通院します:
・数日後:必ず診察。
・その後:1〜2週間に1回状態確認。
創の治癒に合わせて間隔を調整します。
傷の治癒の目安は約2か月ですが、便通の様子などにより、定期的なフォローを続ける場合もあります。

出血や粘液が出るのはいつまで?

手術後はSSGの切開部からピンク色の浸出液が出ることがあります。
徐々に量は減っていき、約1か月ほどで創が閉じるのが目安です。

ご不明な点は遠慮なくご相談ください。
手術後も安心して過ごしていただけるよう、丁寧なサポートを心がけています。

公式サイトはこちら